「サザエさんの“昭和”」とは

サザエさんの“昭和”は、鶴見俊輔、齋藤 愼爾が編集した単行本で、2006年に出版しました。
磯野家といえば、日本人ならばその構成人員を簡単に思い浮かべることのできる、日本を代表する昭和の家族です。
その磯野家が生きた時代である昭和を味わうことのできる缶詰がこのサザエさんの“昭和”となります。

核家族の代表がクレヨンしんちゃんの野原一家であるのに対し、大家族の代表が磯野家であるサザエさん一家であるというのは、日本人のほとんどが容易に想像することのできる、家族のイメージです。

サザエさんの作者でもある、長谷川町子氏の略年表もついていますので、サザエさんとサザエさんの作者について知りたければ、この単行本はとても有用なものでしょう。
また、寺山修司の「サザエさんの性生活」や樋口恵子の「サザエさん・人気の秘密」といったサザエさんに関するエッセイが収録されています。

この単行本からは、サザエさんがどうして我々がここまで愛すキャラクターであるのか、磯野家は理想的な家庭であるのか、そのようなキャラクターを生み出した昭和という時代、そしてその時代を生きた長谷川町子の生涯はどのような方であったのかが理解できます。

収録されているエッセイはすべて秀逸

寺山修司の「サザエさんの性生活」というエッセイは、タブーとされているフグ田家(サザエさんは、フグ田家に嫁入りしていますので、磯野サザエは旧姓になります)の性生活などを、言葉の錬金術師とまで呼ばれる鬼才寺山修司ならではの皮肉れた視点から鋭く切りつけていきますので、一見の価値はあります。
また、昭和の高度経済成長期を迎えた昭和の中で、戦前の気風を残す磯野家は現在の家庭に対してのアンチテーゼになっているのではないかという、エッセイ。

他にも「年をとらない、不幸なサザエさん」という指摘もあります。
年をとらない、つまり不老不死は人間の根源的に持っている願望を不幸であるという論点から、するどく指摘しているエッセイも注目にあたいします。

長谷川町子とサザエさん

サザエさんが誕生するのは戦後すぐの、昭和21年であります。
この頃、長谷川町子は福岡に疎開しており、福岡の西日本新聞の夕刊紙上にサザエさんは初めて登場しました。
余談であるが、磯野家のキャラクターの名前がすべて海産物に関係しているのは、長谷川町子の疎開先の家の裏が海であったことに由来するということです。

サザエさんと昭和について知るには原作者である長谷川町子に対しての知識もつけなれば、サザエさんを語ることは難しいでしょう。
長谷川町子は東京へ引っ越しして、西日本新聞から朝日新聞へとサザエさんも移動します。
サザエさんに対する様々なエッセイに加えて、サザエさんの原作者である長谷川町子の足跡をたどることにより、色々な視点からサザエさんを見ることができるようになるのではないでしょうか。

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